解答速報/入試分析
2026年2月24日

「iPS細胞、今年で20周年らしい」——そう聞くと、ちょっと”今年は出そう”って思いませんか。iPS細胞は2006年の報告から数えて2026年で20年。節目の年は、私立医学部が好む「王道テーマを使って理解を問う」出題と相性がいい単元です。橋本先生の後期予想の3位にランクインしています。この記事では、ES細胞とiPS細胞を”暗記で終わらせず、説明できる”形にまとめます。
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私立医学部の入試でES細胞とiPS細胞が出るとき、問われているのは単なる用語暗記ではありません。「多能性とは何か」「なぜ拒絶や倫理が問題になるのか」「研究でどう使うのか」を、因果で説明できるかが勝負になります。
本記事では、ES細胞とiPS細胞を、入試の出題パターンに沿って整理します。
そもそも”幹細胞”は何がすごいのか
幹細胞の強みは2つです。
- 自己複製:同じ性質の細胞を増やせる
- 分化能:さまざまな細胞に分化できる
(※どこまで分化できるかで「全能性/多能性/多分化能」などが区別される)
ES細胞もiPS細胞も、入試では基本的に「多能性」を軸に問われます。ここが曖昧だと、あとの比較が全部崩れます。
【ES細胞】胚盤胞の”内部細胞塊”から得られる多能性細胞
ES細胞の定義
ES細胞(胚性幹細胞)は、胚盤胞期の内部細胞塊から得られる、多能性をもつ細胞です。
胚盤胞は大きく2つに分かれます。
- 内部細胞塊:将来、胎児本体になる
- 栄養外胚葉:将来、胎盤などになる
この「どこから取るか」が定義そのものなので、頻出です。
入試の出され方(例)
- 「ES細胞は胚盤胞のどの部分から得られるか」
- 「内部細胞塊と栄養外胚葉が将来何になるか」
- 「ES細胞の”多能性”とは何を意味するか」
ES細胞の弱点:拒絶反応と倫理
ES細胞は他個体由来であることが多く、移植に使うと拒絶反応が問題になります。また、ES細胞を得る過程で胚を扱うため、倫理的問題が生じやすい。ここも「丸暗記」ではなく、なぜそうなるかを説明できるかが問われます。
よくある記述問題の型
- 「ES細胞の利用に伴う問題点を2つ述べよ」 → ①拒絶反応 ②倫理的問題(胚の扱い)
- 「拒絶反応が起こる理由を説明せよ」 → 非自己(HLAなど)の認識が絡む、という方向で
ES細胞が研究で強い理由:キメラとノックアウトマウス
ES細胞は、発生過程に組み込ませて個体形成に参加させられるため、キメラを作りやすい。この性質が、遺伝子操作と相性が抜群です。
- 遺伝子を改変したES細胞を胚に戻す
- その細胞が個体の一部(場合によっては生殖系列)に入る
- 結果として、ノックアウトマウスなどの作製につながる
入試の出され方
- 「ノックアウトマウス作製にES細胞が使われる理由」
- 「キメラマウスとは何か(定義)」
- 「遺伝子改変→胚へ導入→個体作出」の流れの穴埋め
【iPS細胞】体細胞を”初期化”して作る多能性細胞
iPS細胞の定義(ここも頻出)
iPS細胞は、体細胞に特定の遺伝子(転写因子)を導入して初期化し、ES細胞に似た性質(多能性)を持たせた細胞です。iPSは induced pluripotent stem cell(人工多能性幹細胞)。
そして中心人物が山中伸弥。
入試の出され方
- 「iPS細胞の作製法を簡潔に述べよ」
- 「iPS細胞が”人工多能性”と呼ばれる理由」
- 「山中伸弥が発見したものは何か」
iPS細胞の利点:拒絶反応と倫理の壁を下げた
受験で一番問われる比較はここです。
- iPS細胞:患者本人の体細胞から作れる → 自家移植なら拒絶反応が起こりにくい
- 胚を直接扱わない → 倫理的ハードルが下がる
※「拒絶反応なし」と断定するより、入試答案では“起こりにくい(回避できる可能性が高い)“ と書くと安全です。
山中因子はどう見つけた?(”方法”が差になる)
私立医学部は近年、「4つの因子」だけでなく、どうやって4つに絞ったかという”研究の論理”を聞きたがります。
典型的な理解はこうです。
- ES細胞らしさ(多能性)に関わる候補遺伝子(転写因子)を多数用意
- それらを体細胞に導入し、ES細胞のような性質が現れるかを調べる
- 候補を減らしていき、最終的に4つの因子に絞り込む
「21種類から4種類を特定」といった数字は、出題資料で与えられることもあるので、“多数候補→絞り込み“ のロジックが伝わる書き方にしておくのが強いです。
山中因子はどうやって「21→4」に絞ったのか(除外実験で”必要”を特定)
山中因子の同定は、「最初から4つを当てた」わけではありません。ポイントは、候補をまとめて入れて”初期化が起きる条件”を作り、そこから1つずつ抜いていく(除外する)ことで、初期化に必要な因子を特定した点にあります。
① まず”起こる条件”を作る(スタート地点)
ES細胞でよく働いていそうな転写因子を、仮に 21種類(A〜U) 用意する。そして、体細胞に A〜Uを全部まとめて導入し、ES細胞のような性質(初期化)が現れるかを調べる。
ここで初期化が起きれば、「この21個の中に必要因子が含まれる」ことが分かる(=成功条件の確立)
② 1つずつ抜く(除外)→「必要な因子」を見つける
次に、1種類だけ抜いたセットを作る。
- 「A以外(B〜U)」
- 「B以外(A,C〜U)」
- 「C以外(A,B,D〜U)」 …というように、”欠損セット”を順番に試す。
そして結果をこう解釈する:
- ある因子を抜いたときだけ初期化が起きない → その因子は 初期化に必要(必要条件)
- 抜いても初期化が起きる → その因子は 必須ではない(少なくとも必要条件ではない)
この「抜いたら失敗する=必要」という考え方が、因子同定の核心です。
③ “必要因子”だけを残して最小セットへ
この除外実験で「抜くと失敗する因子」が数個に絞れたら、今度は逆に必要と判定された因子だけを組み合わせて導入し、初期化が起きるか検証する。
ここで初期化が再現できれば、「その最小セットが十分条件(少なくとも実験条件下で十分)」となり、最終的に 4つ(山中因子)に到達する。
iPS細胞の弱点:当初は「作り方」そのものががん化リスクだった
iPS細胞は画期的ですが、登場当初は「未分化だから増える」以前に、作製法そのものが”がん化リスク”を上げうる点が大きな論点でした。入試で問われやすいのは、この”仕組み”です。
当初の作製法でリスクが問題になった理由
初期のiPS細胞作製では、山中因子を体細胞に導入するために レトロウイルスベクター が用いられました。レトロウイルスは、導入した遺伝子が 細胞のDNAにランダムに組み込まれる性質があります。
この「ランダム挿入」が問題になるのは、次の2点です。
- 重要な遺伝子の途中に挿入されて機能が壊れる(挿入変異)
- がん関連遺伝子の近くに入って発現が乱れる(制御異常)
さらに当初は、山中因子の1つとして c-Myc(がん原遺伝子) が用いられていました。c-Mycは細胞増殖を強く促す方向に働くため、導入・発現のされ方によっては がん化につながりうる。したがって、初期のiPS細胞では「レトロウイルスによるランダム挿入」+「c-Myc使用」——この2つがセットで、がん化の懸念を強めていました。
現在はどう改善されたか
その後、作製法は改良され、導入方法として プラスミドベクター など、DNAへの組み込みを避けやすい手法が用いられる方向へ進みました。また、因子の組み合わせも見直され、c-Mycを用いない方法が採用されるケースが増えています。
つまり現在は、
- 遺伝子がランダムに組み込まれるリスクを下げる導入法
- c-Myc非使用(あるいは影響を抑える設計)
によって、当初問題になった”作り方由来の腫瘍化リスク”は小さくできる、という整理になります。
※入試答案では「がん化の懸念がなくなった」と断定するより、「低減された」「小さくなった」と書くのが安全です。
まとめ:ES vs iPS(入試で書ける比較)
- ES細胞:胚盤胞の内部細胞塊由来。多能性。研究利用(キメラ・ノックアウト)に強いが、倫理・拒絶が問題。
- iPS細胞:体細胞を初期化して作る多能性。倫理・拒絶の問題を軽減しうるが、腫瘍化など安全性が論点。
典型の出題パターン(これだけ押さえれば対応できる)
- 定義穴埋め:ES=内部細胞塊、iPS=体細胞の初期化
- 比較記述:倫理・拒絶・安全性
- 研究利用:ES→キメラ→ノックアウト
- 実験ロジック:候補因子→絞り込み(山中因子)
- リスク説明:未分化残存・がん化の理由
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