解答速報/入試分析
2026年2月26日

はじめに:COVID-19が”免疫×検査”を入試の定番にした
2019年12月に中国・武漢で報告された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的流行となり、大学入試(とくに医学部)でも頻出の題材になった。コロナ関連問題が増えたことで、新しく”定番化した”出題テーマもある。とりわけ検査法はニュースで目にする一方で原理は誤解されやすく、入試ではそこが狙われる。
とくにPCR検査は一般には「PCR」と呼ばれるが、SARS-CoV-2は遺伝物質がRNAであるため、実際の検査はRT-PCR(逆転写→PCR)で行われる。つまり、試料中のウイルスRNAを逆転写酵素でcDNAに変換し、ウイルス特異的配列をプライマーで指定して増幅することで感染の有無を判定する。
さらにCOVID-19は、遺伝子(RT-PCR)/抗原(イムノクロマト)/抗体(ELISA)という3系統の検査を同一テーマで比較させやすく、入試に非常に向く。 後期私立医学部は「知識確認」だけでなく、短い文章・図・表を読ませて原理理解と結果解釈を一気に問う形式が出やすい。COVID-19の検査は、
- RT-PCR:なぜ”PCR”ではなく”RT-PCR”なのか(RNA→cDNAの必然性)
- イムノクロマト:ラインの意味(テストライン/コントロールライン)と判定不能の理由
- ELISA:二次抗体+酵素+基質で”可視化・増幅”する意味(高感度の理由)
を、同じ「感染症・免疫」の枠で束ねて問えるため、後期が好む「読み取り+説明」問題に噛み合う。
まず押さえる:出題が定番化した3テーマ
定番化されたテーマは、次の3つである。
□ 生物の定義(ウイルスは生物か非生物か)
□ 感染予防(なぜアルコール・洗剤で無効化できるか)
□ 検査方法(RT-PCR/イムノクロマト/ELISAの比較と結果判定)
ウイルスは「生物と非生物の境界」に位置し、生物の定義(細胞構造・代謝・自己増殖など)を考えさせる格好の題材である。また、感染・免疫・遺伝子発現(核酸)といった生物基礎〜生物の重要単元が、ウイルスを軸に一つのストーリーとしてつながる。
さらにCOVID-19の流行をきっかけに、実社会で用いられた検査法が受験生に馴染みのある題材となり、入試では「原理理解」「実験操作の意味」「結果の読み取り」が狙われやすくなった。
生物の定義(ウイルスは生物か?)―ここが”出題の核”
COVID-19以降、ウイルスは入試における「定番題材」になった。理由は単純で、ウイルスは生物の定義を問うのに最も都合がよい存在だからである。 「ウイルスは生物ではない」と暗記していても得点は安定しない。入試が求めているのは、生物に共通する特徴を挙げ、その観点でウイルスを評価できるかという思考である。
出題の核:ウイルスの「非生物的特徴」を言えるか
頻出の答えはほぼ3本柱に集約される。 (1)細胞構造をもたない 細胞膜・細胞質・リボソームなど、細胞としての構造をもたない。 →よって、細胞分裂で増殖することもできない。 (2)代謝を行わない(酵素をもたない) ウイルスは自分の内部で物質の合成・分解を進める代謝系をもたず、ATP合成も行えない。 (=代謝の中心となる酵素・代謝経路を自前で持たない、が本質) (3)単独で自己増殖できない 増殖は必ず生きた宿主細胞の中で起こる。宿主の代謝・翻訳系を借りて核酸やタンパク質を合成する。(「宿主依存」を具体的に言えるかが差になる)
ひっかけ整理:○×・選択肢で落としやすい点
ここは医学部が好む「定義の理解チェック」。言い切りの○×で落とさない。
- RNAを遺伝物質にもつウイルスはいる(〇) 例:コロナウイルス、インフルエンザなど。
- 「細菌に感染するウイルスはいない」は誤り(×) 細菌に感染するウイルスは バクテリオファージ(ファージ)。ハーシーとチェイスの実験で超定番。
- 「代謝によりATPを合成する」は誤り(×) ウイルスは代謝しないためATP合成はできない。
入試が好きな言い回し:「生物とも非生物ともいえない」
ウイルスは生物の特徴を欠く一方で、生物らしい側面ももつ。ここは記述でそのまま出る。 生物とみなせる特徴:遺伝物質をもつ/増殖する(ただし宿主内)/突然変異し進化する 生物とはみなしにくい特徴:細胞をもたない/代謝しない/単独で増殖できない
感染予防(エタノール・洗剤が効く理由)―”構造から説明”できるか
感染予防は「気をつける」の話ではない。医学部入試が問うのは、ウイルスの構造から、なぜ消毒が有効かを説明できるかである。 コロナウイルスを含む多くのウイルスは表面エンベロープ(脂質二重膜)をもつ。ここが最大のポイント。
なぜエタノール・洗剤で感染力が失われるのか
エンベロープはリン脂質からなる膜であり、エタノールや界面活性剤(洗剤)は脂質膜を壊す。 膜が破壊されると、ウイルス粒子の構造が維持できず、感染に必要な働き(宿主細胞への侵入など)が成立しなくなる。 ここで重要なのは、「脂質膜が壊れる → 構造が壊れる → 感染に必要な機能が成り立たない」という因果の鎖を作ること。単に「脂質膜だから溶ける」だけだと説明が浅くなりやすい。
50字以内の解答テンプレ
「エンベロープはリン脂質からなる膜で,エタノールや洗剤が膜を壊し感染力を失わせるため。」(※「溶かす」「分解する」「破壊する」などの語でも可。字数に合わせて調整。)
検査方法:RT-PCR/イムノクロマト/ELISAを”同一テーマで比較”する
感染症の検査は大きく、(1) 病原体そのものを見つける検査、(2) 免疫反応(抗体)を見つける検査、に分かれる。 COVID-19はこの比較が作りやすい。
- RT-PCR:病原体の遺伝子(RNA)を検出(=感染の有無の確定寄り)
- 抗原検査(イムノクロマト):病原体タンパク質(抗原)を検出(=迅速)
- 抗体検査(ELISA):体内でできた抗体を検出(=過去感染・免疫反応の証拠)
RT-PCR法(遺伝子検査):RNAウイルスだから”RT”が要る
【何を検出する?】 ウイルスの遺伝子(RNA) 【原理(入試で最短)】
- PCRはDNAしか増幅できない
- SARS-CoV-2はRNAを遺伝物質にもつ
- だから、逆転写でRNA→cDNA(DNA)にしてからPCRで増幅する
- プライマーが特異的配列に結合するので特異性が担保される
【必要な酵素(定番空欄)】
- 逆転写酵素
- DNAポリメラーゼ(耐熱性)
【よく出る論点】
- なぜRTが必要か(鋳型がRNAだから)
- なぜ高温工程が必要か(二本鎖DNAを一本鎖にしてプライマー結合を可能にする)
- “特異的”と言える理由(プライマーが特定配列に結合)
【長所・短所】
- 長所:少量でも検出しやすい(増幅する)
- 短所:時間・設備が必要
イムノクロマト法(迅速検査):ライン判定の意味を説明できるか
イムノクロマトは、検体がニトロセルロース膜上を毛細管現象で移動し、標識粒子がラインに集まって目視できる方法。入試は「ラインの意味」を狙う。
【何を検出する?】
- 抗原検査:病原体タンパク質(抗原)
- 抗体検査:血清中の抗体(※どちらかは問題文の設計で決まる。ここが読み取りポイント。)
【判定の基本(最頻出)】
- コントロールラインなし → 判定不能(検査が成立していない)
- コントロールあり+テストあり → 陽性
- コントロールのみ → 陰性
【コントロールの役割(定番記述)】
検体が正しく流れ、試薬が働いたことを確認し、陰性を確定するため。 【判定不能の原因例】 試薬の劣化、流れ不良、標識抗体の変性、検体条件不適など。
ELISA法:酵素で”見える化・増幅”する(高感度の理由)
ELISAは抗原抗体反応を、酵素反応(発色)で検出する方法。入試ではとくに抗体検査(間接ELISA)が頻出。
【何を検出する?(典型)】
被検者血清中の特異的抗体(病原体に対する抗体)
【手順(間接ELISAの典型)】
- ウェル底に抗原固定
- 血清投入(特異的抗体のみ結合)
- 洗浄(非特異的結合の除去)
- 酵素標識二次抗体を結合
- 基質→発色(生成物)で検出
【洗浄の意味(狙われる)】 結合しなかった抗体が残ると背景が上がり偽陽性の原因。
→洗浄は「特異的に結合した分だけを残す」工程。
【高感度な理由(頻出)】
酵素反応でシグナルが増幅されるため、微量でも検出できる。
3手法の”役割分担”を一文で(最後のまとめテンプレ)
- RT-PCR:病原体の遺伝子(RNA)を逆転写→増幅して検出する「確定診断寄り」
- ELISA:抗原抗体反応を酵素反応で増幅して検出する「高感度・定量寄り」
- イムノクロマト:膜上でラインを作って目視判定する「迅速・簡便寄り」
入試での典型的な問われ方(このままチェックリスト)
- 「何を検出しているか(RNA/抗原/抗体)」
- 「なぜRTが必要か(PCRはDNA)」
- 「ELISAで洗浄する理由」
- 「テストライン/コントロールラインの役割」
- 「判定不能になる条件」
- 「模式図から”どの抗体が固定され、何が流れるか”を読み取れ」
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