解答速報/入試分析
2026年1月18日

生物選択者に特化した私立医学部専門予備校のプラタナスです。
本稿では、先日公開したブログ「【私立医学部生物】2026年入試予想|市原vs橋本が読む最新トレンド」においても記載した「電子伝達系と水素イオン濃度勾配」を解説していきます。
医学部志望の方はぜひご一読ください。
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※大学別の生物予想問題は「【2026年度私立医学部入試】 生物入試分析と出題予想(大学別一覧)」から確認できます。
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はじめに― 新課程で差がつくATP合成の本質 ―
私立医学部生物は「単純なATPの数」ではなく「仕組み」を見ている
私立医学部生物の入試問題は、ここ数年で明確な方向転換をしています。かつてのように、「ATPは何個できるか」を暗記して答えるだけの問題は減り、「なぜその数になるのか」「どこでエネルギーが生まれているのか」を説明できるかどうかが問われるようになってきました。
その象徴的なテーマが、水素イオン(H⁺)の濃度勾配と電子伝達系です。
橋本先生の2026年入試予想ランキングで8位にランクインしている理由も、まさにここにあります。新課程では、ATP合成を「結果」ではなく、エネルギー変換の過程として理解しているかが強く求められているのです。
本記事では、以下の事項を医学部受験生向けに徹底的に整理します。
- ミトコンドリアの電子伝達系
- 葉緑体の電子伝達系
- 水素イオン濃度勾配の意味
- ATP合成酵素の回転
- ATP合成数が「38 → 32」と揺れる理由
水素イオン濃度勾配とは何か
ATP合成の正体は「坂道」にある
まず最も重要な概念から確認します。ATPは、水素イオン(H⁺)の濃度勾配を利用して合成される。これが、電子伝達系の本質です。
濃度勾配とは、H⁺が「多い側」と、H⁺が「少ない側」の差のことです。この差があることで、H⁺は自然に「多い側 → 少ない側」へ移動しようとします。この移動エネルギーをATP合成に使っているのです。
ATP合成は「化学反応」ではなく、エネルギーの利用です。
ミトコンドリアの電子伝達系
呼吸でATPが生まれる場所
電子の流れと水素イオンの移動
ミトコンドリアでは、NADHとFADH₂が電子を電子伝達系に渡します。電子は内膜上の複数の複合体を順に移動し、その過程でエネルギーが放出されます。
このエネルギーを使って、H⁺はマトリックス → 膜間腔へ汲み上げられる。結果として、以下のような濃度勾配が形成されます。
- 膜間腔:H⁺が多い
- マトリックス:H⁺が少ない
ATP合成酵素の回転
H⁺はATP合成酵素を通って、再びマトリックス側へ戻ります。H⁺は膜間腔 → マトリックスへ移動します。このとき、ATP合成酵素は物理的に回転する、という点が新課程で特に重視されています。
- H⁺の流れ
- 酵素の回転
- ATPの合成
これらが一連の現象として結びついているかどうかが、入試で問われます。
葉緑体の電子伝達系
「方向が逆」なだけで、原理は同じ
葉緑体でも、ATPは水素イオン濃度勾配によって合成されます。ただし、ミトコンドリアとの違いは以下の点です。
- H⁺が溜まるのはチラコイド内腔→H⁺はストロマ → チラコイド内腔へ
- H⁺が少ないのはストロマ
- 電子の起点は水(H₂O)
- エネルギー源は光
しかし、H⁺の勾配を作り、ATP合成酵素でATPを作る(チラコイド内腔→ストロマへ)、という原理は、ミトコンドリアと完全に共通しています。
つまり、H⁺(水素イオン)の移動方向を正確に覚えないといけません。ここを「別物」として覚えてしまうと、新課程の思考問題に対応できません。
ATP合成数はなぜ変わるのか
38 ATPと32 ATPの違いの正体
高校生物では長らく、以下のように計算されてきました。
- NADH → 3 ATP
- FADH₂ → 2 ATP
これに基づくと、グルコース1分子 → 38 ATPとなります。
しかし近年では、以下のような値が用いられることが増えています。
- NADH → 約2.5 ATP
- FADH₂ → 約1.5 ATP
これは、ATP合成酵素の回転数、H⁺の移動数がより正確に測定されるようになった結果です。さらに、解糖系で生じたNADHは、そのままミトコンドリア内膜を通れないという点も考慮されます。
その結果、以下のようにされる場合があります。
- 実際の真核細胞では
- ATP合成数は約30〜32 ATP
これを教科書からも見てみましょう。
数研出版では 32 ATP、東京書籍・第一学習社・啓林館・実教出版・浜島書店では 38 ATP が採用されています。
このように教科書によって記載が分かれていますが、実際に呼吸によって合成されるATP量は約30~32 ATPと考えられています。これは、古くから用いられてきた理論値である 38 ATP よりも少ない値です。
その理由として、次の点が挙げられます。
まず、電子伝達系で形成された水素イオン(H⁺)の濃度勾配による駆動力は、ATP合成以外にも消費されることが知られています。
たとえば、物質輸送や熱の発生などにエネルギーが使われるため、すべてがATP合成に利用されるわけではありません。
また、細胞の種類によって、解糖系で生じたNADHがミトコンドリア内膜を通過する方法が異なることも影響します。
この際、シャトル機構によって電子が運ばれますが、その過程でATPの生成効率が低下したり、エネルギーが消費されたりする場合があります。
さらに、従来はNADH 1分子から 3 ATP、FADH₂ 1分子から 2 ATPが生成されると考えられてきましたが、近年の研究により、実際のATP生成数はこれより小さいことが明らかになってきました。
現在では、NADHからは約 2.5 ATP、FADH₂からは約 1.5 ATP が生成されるとする見方が一般的になりつつあります。
このような背景から、教科書によって 38 ATP と 32 ATP の表記が分かれているのです。
医学部入試でどう問われるか
数字より「説明」ができるか
私立医学部入試で重要なのは、38か32か ではありません。重要なのは、ATPはどこで、何を利用して、どのように作られているのかを説明できることです。
今後は、以下のような仕組み理解型の問題が増えていくと予想されます。
- 「水素イオン濃度勾配が崩れるとどうなるか」
- 「電子伝達系が止まると何が起こるか」
- 「ATP合成酵素はなぜ回転するのか」
電子伝達系阻害剤とは何か
ミトコンドリアにおけるATP合成は、電子の流れそのものではなく、水素イオン(H⁺)の濃度勾配によって駆動されています。
したがって、以下のようなことはATP合成を阻害します。
- 電子の流れを止める
- H⁺勾配を作れなくする
- H⁺勾配を壊してしまう
ここが、電子伝達系阻害剤を理解する最大のポイントです。
ミトコンドリア内膜で何が起きているか
通常、ミトコンドリアでは以下のようなことが起こっています。
- 電子はNADH・FADH₂ → 電子伝達系 → 酸素
- そのエネルギーでH⁺がマトリックス → 膜間腔へ汲み上げられる
- 膜間腔にH⁺がたまり濃度勾配(電気化学的勾配)が形成
- H⁺がATP合成酵素を通って戻るとATPが合成される
ATP合成の直接の駆動力は、H⁺の濃度勾配です。
① 電子伝達系そのものを止める阻害剤
シアン化物(CN⁻)
- 電子伝達系の最終段階(シトクロムオキシダーゼ)を阻害
- 酸素に電子が渡らなくなる
- 電子の流れが完全に停止
結果として以下のようなことが起こります。
- H⁺の汲み上げが起こらない
- H⁺濃度勾配が形成されない
- ATP合成は停止
② H⁺濃度勾配を「作れなくする」阻害剤
ロテノン
- 電子伝達系の初期段階(NADH → ユビキノン)を阻害
- 電子の流れが途中で止まる
結果として以下のようなことが起こります。
- H⁺汲み上げが途中で止まる
- 勾配が十分に形成されない
- ATP合成量が低下
③ H⁺濃度勾配を「壊す」阻害剤(脱共役剤)
ここが新課程で特に重要です。
代表例:DNP(2,4-ジニトロフェノール)
- ミトコンドリア内膜を通って
H⁺を勝手に通過させてしまう - H⁺がATP合成酵素を通らずに戻る
結果として以下のようなことが起こります。
- 電子伝達系:進行する
- 酸素消費:続く
- しかしATPは合成されない
エネルギーは熱として放散
ここでよく出る入試表現:電子伝達は進むが、ATP合成は起こらない
④ 内膜をH⁺が自由に通れるようにしたらどうなるか
問題文でよくある聞き方です。「ミトコンドリア内膜がH⁺を自由に通すようになった場合、ATP合成はどうなるか」。答えは明確です。
- H⁺濃度勾配が維持できない
- ATP合成酵素が駆動しない
- ATP合成は起こらない
H⁺勾配がない=ATP合成できない
葉緑体でも同じ原理が使われている
ヤーゲンドルフの実験
ここで葉緑体の話につながります。
ヤーゲンドルフの実験(概要)
- チラコイド膜をpH 4(強酸性)の溶液に浸す
→ チラコイド内腔にH⁺が大量に蓄積 - その後、急にpH 8(弱塩基性)の溶液へ移す
- 光を当てなくてもATPが合成される
この実験が示したこと
- 光は直接ATPを作っていない
- H⁺濃度勾配さえあればATPは合成できる
- ATP合成の本質は水素イオンの流れ
ミトコンドリアと葉緑体は原理が完全に共通
超重要:pHとH⁺濃度の関係(ここでつまずく生徒が多い)
ここは必ず明示すべきポイントです。
pHとは何か
pH = −log₁₀[H⁺]つまり、pHが低い → H⁺濃度が高い、pHが高い → H⁺濃度が低いということです。
❌ よくある誤解
「pHが低い=H⁺が少ない」
⭕ 正しい理解
pHが低い=H⁺が多い
まとめ|医学部入試における新課程の生物は「流れ」を理解する科目へ
本記事で見てきたように、ATP合成、電子伝達系、水素イオン濃度勾配はすべて一つの流れとして理解する必要があります。
暗記だけの生物では、医学部入試は通用しません。
私立医学部専門予備校プラタナスでは、なぜそうなるのか、どこでエネルギーが生まれるのかを言葉で説明できる力を重視した指導を行っています。
新課程の医学部生物に不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
「理解できる生物」への転換が、合格への近道です。
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