解答速報/入試分析
2025年1月22日
本日2025年1月22日は,国際医療福祉大学と岩手医科大学の試験でした。皆さん,お疲れ様でした。
岩手医科大学の生物に例年と違い「進化・系統」が出題されました。やはり,新課程の影響から「集団遺伝・進化系統」の出題が多くなってきそうです。
それでは,岩手医科大学(生物)の出題傾向と今年の今年度入試のトレンド分析をしていきます。
出題内容
1:進化・系統(人類と類人猿の違い,小進化・大進化,二名法など)
2:動物の環境応答(視野の欠損,フクロウの時間差,遠近調節,桿体・錐体)
3:代謝(クエン酸回路)
4:体内環境(パラトルモン,血糖値上昇)
5:バイオテクノロジー(オペロン説)
6:進化・系統(マラリア・遺伝子頻度)
7:生殖と発生(卵割と体細胞分裂)
進化・系統
→マラリアの遺伝子頻度の計算問題
類題:国際医療福祉大学
■類人猿と人類の違い
・直立二足歩行を行うか否かが区別のポイント
その他の違いは以下のようになる
骨格 | 頭骨 | 歯列と歯 | 土ふまず | |
---|---|---|---|---|
類人猿 | ・体軸は腰部で屈曲 ・細長い骨盤 | ・発達したあごや眼窩上隆起 | ・犬歯が発達 ・U字型の歯列 | なし |
人類 | ・体軸は垂直 ・S字型に湾曲した脊柱 ・骨盤が横に広い | ・眼窩上隆起が退化、おとがいが発達 ・大後頭孔の位置が真下 | ・放物線上の歯列 | あり |
■二名法について(リンネが考案)
学名=属名+種小名
例 和名:ヒト 学名:Homo(属名) sapiens(種小名)
■生態的同位種
異なる地域に生息するが,同じニッチを占めている生物を生態的同位種という。
例として、それぞれの地域で食物連鎖の最上位を占める大型の肉食動物では,
アフリカのライオン,アジアのトラ,南アメリカのピューマなどがいる。
■鎌状赤血球貧血症
ヘモグロビンβ鎖の遺伝子で一塩基置換が原因で生じる。
正常のヘモグロビンではDNA上の塩基で「GAG」というグルタミン酸ができる領域において置換が生じ,「GTG(mRNAではGUG)」となりバリンとなる。
酸素が不足すると赤血球が鎌のように細くなり,血管がつまり,重症の貧血を引き起こす。
マラリア耐性について
鎌状赤血球貧血症の原因遺伝子がホモ接合体の場合は成人までに多く死亡してしまう。
しかし原因遺伝子と正常遺伝子がヘテロ接合体のヒトの場合,貧血の程度が軽く,マラリア原虫が赤血球に感染しにくいため,マラリアという病気に対しては耐性がある。
生存に相対的に有利なため,マラリア流行地域ではこの原因遺伝子の遺伝子頻度が高くなっている。
動物の環境応答
→フクロウの時間差
類題:北海道大学(2007年),獨協医科大学(2024年)
→視覚欠損
類題:北里大学(2022年)
■遠近調節
光は角膜と水晶体で屈折することにより,網膜上に像を結ぶ。
・近くをみるとき
毛様体が収縮し,チン小帯がゆるむことで水晶体は自らの弾性力で厚くなる。
・遠くをみるとき
毛様体が弛緩し,チン小帯が引っ張られることで水晶体は薄くなる。
ポイントは「近くをみるとき」の機構を覚えて,遠くをみるときはその逆であるという形で覚えると混乱しない。
代謝
→直線的・回路的
類題:名古屋市立大学(2022年)
■クエン酸回路
ミトコンドリアのマトリックスで行われ,グルコース1分子あたり2ATPを産生する。
ピルビン酸が脱炭酸反応と脱水素酵素により完全に分解される。
2C3H4O3+6H2O+8NAD++2FAD→6CO2+8(NADH+H+)+2FADH2+2ATP
物質としての変化は,
ピルビン酸→アセチルCoA(+オキサロ酢酸)→クエン酸→αケトグルタル酸→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸
覚え方は「クエンさん(クエン酸),急いで蹴とばし(αケトグルタル酸)怖くなり(コハク酸),踏まれた(フマル酸)リンゴ(リンゴ酸)を置き去りに(オキサロ酢酸)」
また酸素が欠乏すると電子伝達系が止まってしまうが,NAD+なども再生されないため連動してクエン酸回路も止まってしまう。
体内環境
■血糖調節
ヒトの血糖濃度は通常,血液100mlあたり約100mg(0.1%)である。間脳の視床下部が中枢ですい臓でも感知する。血糖調節には自律神経系と内分泌系により調節されている。
・高血糖時 副交感神経がすい臓のランゲルハンス島B細胞を刺激してインスリンを分泌する。インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成や組織でのグルコース取り込みと消費を促進する。
・低血糖時 交感神経がすい臓のランゲルハンス島A細胞を刺激してグルカゴンを分泌,また副腎髄質からアドレナリンが分泌され,肝臓でのグリコーゲンの分解を促進しグルコースにする。副腎皮質からは糖質コルチコイドが分泌され,タンパク質からの糖新生が促進される。
バイオテクノロジー
■オペロン説(原核生物の遺伝子発現調節)
オペロン説はジャコブとモノーによって提唱され,オペロンとはまとめて調節される遺伝子の単位のことである。
転写されるかどうかは「オペレーター領域にリプレッサーが結合しているか否か」に注意しよう。
例:ラクトースオペロン
大腸菌がラクトースを分解するにはβガラクトシダーゼなどの3種類の酵素が必要であり,この酵素ができるときに必要な遺伝子を構造遺伝子という。それがオペロンを構成している。
・グルコースがあるとき(ラクトース分解酵素遺伝子は転写されない)
→リプレッサーがオペレーターに結合し,RNAポリメラーゼはプロモーターに結合できない。
・グルコースがなくてラクトースがあるとき(ラクトース分解酵素遺伝子は転写される)
→ラクトースの誘導物質がリプレッサーに結合することで,リプレッサーがオペレーターから離れる。RNAポリメラーゼがプロモーターに結合できるようになり,転写が開始される。その結果ラクトース分解酵素が産生され,ラクトースを分解しグルコースとなる
■真核生物の遺伝子発現調節
プロモーター上で,基本転写因子,RNAポリメラーゼに調節タンパク質が作用し,その遺伝子の転写を促進または抑制する。
転写を促進する調節タンパク質→アクチベーター
転写を抑制する調節タンパク質→リプレッサー
※原核生物とは異なり,真核生物では複合的に物質が作用することで転写が調節される。
生殖・発生
■卵割
受精卵から胞胚期までの体細胞分裂を卵割という。体細胞分裂との違いは頻出なので以下にまとめます。
・細胞が成長しない(割球は分裂ごとに小さくなる)
・同調分裂している
・分裂速度が速い(G1とG2がほぼないため,細胞周期が短い)
割れ方:経割(たて)→経割(たて)→緯割(よこ)→経割(たて)→緯割(よこ)
剣道でイメージすると「メン→メン→ドウ→メン→ローキック」で覚えると忘れにくい。
明日の杏林大学に向けて
杏林大学の問題は,大問1・2でミスをおさえて,大問3・4の考察問題にしっかりと時間を残し解くことが大事です。愛知医科大学・岩手医科大学で出題された知識的な部分をしっかりと復習し,明日に挑みましょう。
明日の帝京大学に向けて
基本的に体内環境が3日間連続出題されるくらい「体内環境」の出題頻度は高いです。そのほかの単元は満遍なく,植物も出題されるので苦手な部分を確認しておきましょう。また,去年からマークシートになっているので,鉛筆を忘れずに!記述もでますが,去年からひらがなで書け「ぷらすちっくちゅーぶ問題」はなくなったので,今年も出題されないと思います。
入試直前講習のお知らせ
プラタナスでは今年の私立医学部受験生に対して入試直前講習を行なっております。
参加費は無料!定員は15名です。詳しくはこちら。
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