解答速報/入試分析
2026年1月15日

生物選択者に特化した私立医学部専門予備校のプラタナスです。
本稿では、先日公開したブログ「【私立医学部生物】2026年入試予想|市原vs橋本が読む最新トレンド」においても記載した「アメフラシで読み解く”学習”と”シナプス可塑性”」を解説していきます。
医学部志望の方はぜひご一読ください。
※youtubeチャンネルもぜひご確認ください。
※大学別の生物予想問題は「【2026年度私立医学部入試】 生物入試分析と出題予想(大学別一覧)」から確認できます。
※大学別の小論文/面接のまとめは「【私立医学部受験】面接・小論文対策の全体像と大学別分析まとめ」から確認できます。
はじめに
私立医学部生物の入試問題は、ここ数年で明確な変化を見せています。それは、「知っているか」ではなく、「なぜそうなるのかを説明できるか」を本気で問う試験へと移行している、という点です。
この流れの中で、プラタナス生物講師・市原先生の入試予想ランキング5位、そして橋本先生のランキングでは4位に挙げられているテーマが、アメフラシです。
一見すると、「なぜ軟体動物が医学部入試に?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、アメフラシは「記憶」「学習」「神経伝導・伝達」「シナプス可塑性」といった、医学の根幹につながる概念を最もシンプルに示してくれるモデル生物です。
また,高校生物をしっかりと勉強してきたかを,アメフラシだけの問題で知ることができます。
この記事では、なぜ私立医学部がアメフラシを出題するのか、そして受験生はどこまで理解しておくべきなのかを、医学部専門予備校プラタナスの視点から、丁寧に解説していきます。
アメフラシとは何か ― なぜ医学部入試に出るのか
アメフラシは、軟体動物門に属する動物で、イカやタコ、カタツムリの仲間です。
体表は外とう膜に覆われ、殻をもたないのが特徴です。
アメフラシが神経研究で用いられてきた理由は、極めて明確です。
- 神経細胞が非常に大きい
- 神経回路が単純で再現性が高い
- 行動と神経活動の対応関係を直接追える
この特性により、「刺激 → 神経 → 行動」という因果関係を、実験的に検証することが可能になりました。
これは、ヒトの脳や神経を直接操作できない医学研究において、不可欠なモデルです。そのため、アメフラシは神経生理学の発展に大きく貢献してきました。
医学部入試でアメフラシが問われる背景には、基礎医学的な視点を持っているかどうかを見たいという、大学側の明確な意図があります。
慣れと鋭敏化 ― 「学習」はどこで起きているのか
アメフラシ研究で最も有名なのが、えら引っこめ反射です。水管に軽い刺激を与えると、アメフラシは反射的にえらを引っ込めます。
慣れ
弱い刺激を繰り返すと、次第に反応が弱くなります。これは単なる疲労ではなく、刺激に対する学習的な反応低下です。
鋭敏化
一方、尾部などに強い刺激を与えた後では、同じ弱い刺激に対しても、反応が大きくなります。
ここで重要なのは、筋肉が強くなったわけでも、神経細胞が増えたわけでもないという点です。変化が起きているのは、神経と神経のつなぎ目=シナプスです。
脱慣れ
脱慣れとは、慣れによって弱くなった反応が、別の強い刺激を与えることで再び回復する現象を指します。ここで重要なのは、「慣れが消えた」わけではない、という点です。
慣れとは、刺激を繰り返すことで、シナプスでの神経伝達物質の放出量が減少し、反応が弱くなった状態でした。
脱慣れは、その状態に対して、新たな強い刺激が加わることで、シナプス伝達が一時的に回復する現象です。
① 慣れが起こる仕組み
慣れとは何か
慣れとは、同じ刺激を繰り返し受けることで、反応が次第に弱くなる現象です。
アメフラシでは、水管を軽く何度も刺激すると、えらの引っ込み反射が次第に弱くなります。
慣れの本質(シナプスレベル)
慣れが起こる原因は、感覚ニューロンと運動ニューロンの間のシナプス伝達が弱くなることです。
具体的には、感覚ニューロンが活動電位を発生させるが、神経伝達物質の放出量が徐々に減少する、その結果、
- 運動ニューロンの興奮が弱くなる
- 筋肉の収縮が弱くなる
- 行動としての反応が小さくなる
という流れになります。
慣れで起きている分子レベルの変化
慣れでは、主に次の変化が起こります。
- Ca²⁺チャネルの開口が減少
- 神経終末へのCa²⁺流入量が低下
- 神経伝達物質の放出量が減少
つまり慣れとは、「刺激に慣れた」のではなく、「シナプスでの情報伝達が抑えられた状態」なのです。
② 脱慣れが起こる仕組み
脱慣れとは何か
脱慣れとは、慣れによって弱くなった反応が、別の強い刺激を与えることで回復する現象です。
ここで重要なのは、脱慣れは「慣れの消去」ではないという点です。
脱慣れで起こる神経回路の変化
脱慣れが起こるとき、アメフラシの体内では次のようなことが起きています。
- 強い刺激(例:尾部への刺激)
- 調節ニューロンが興奮
- セロトニンが分泌
このセロトニンが、感覚ニューロンのシナプス終末に作用します。
脱慣れの分子メカニズム
セロトニンが作用すると、
- K⁺チャネルが抑制
- 活動電位の持続時間が延長
- Ca²⁺チャネルが長く開く
- Ca²⁺流入量が増加
- 神経伝達物質の放出量が増える
その結果、低下していたシナプス伝達が一時的に回復→ 行動としての反応が戻る。これが脱慣れです。
伝導と伝達を分けて考える
アメフラシでは、「伝導」と「伝達」の区別が極めて重要です。
- 伝導:神経細胞内を活動電位が伝わること(軸索内)
- 伝達:シナプスを介して、次の神経細胞へ情報が渡ること
アメフラシの慣れ・鋭敏化で変化するのは、伝導ではなく、伝達です。
つまり、活動電位の大きさが変わったのではなく、シナプスでの情報伝達効率が変化したという点を、必ず押さえておく必要があります。
鋭敏化の仕組み ― カリウムイオンがカギ
鋭敏化の分子レベルの仕組みは、私立医学部が非常に好むポイントです。
強い刺激が加わると、調節ニューロンが興奮し、感覚ニューロン終末にセロトニンが作用します。その結果、セカンドメッセンジャーであるcAMPが合成され、
- K⁺チャネルが抑制される
- K⁺の流出が遅れる
- 活動電位の持続時間が延びる
- Ca²⁺流入量が増加
- 神経伝達物質の放出量が増える
この一連の流れにより、同じ刺激でも、より強い反応が起こるようになります。ここで問われているのは、イオンの動きとシナプス機能を因果関係で説明できるかという点です。
シナプスの可塑性
このように、経験や刺激によってシナプスの働きが変化する性質を、シナプスの可塑性と呼びます。これは、記憶、学習、神経回路の適応といった、医学・医療の根幹に関わる概念です。
学習や記憶によりシナプスの伝達効率が変化することをシナプス可塑性といいます。
アメフラシの研究は、「学習とは、脳の構造が変わることではなく、シナプスの性質が変わることである」という考え方を、世界で初めて実験的に示しました。
だからこそ、医学部入試ではアメフラシが繰り返し出題されるのです。
入試問題にチャレンジ
問1. シナプス可塑性とはどのような現象か,40字以内で説明しなさい。(富山大学 2025年)
問2.ネコを使った研究によって慣れにより神経伝達が減弱することが1966年に報告されている。しかし、ネコを使った研究では神経接続が変化するしくみの解明には至らず、それを初めて解明したのは1969年に始まったアメフラシを使った一連の研究であった。当時,ネコを使った研究で解明できなかったシナプス可塑性のしくみが、アメフラシの慣れと鋭敏化に関する一連の研究で解明できたのはなぜか、その理由を考察し簡単に説明しなさい。(札幌医科大学 2024年)
解答
問1
シナプスの伝達効率が興奮の伝達の頻度によって変化する現象。
問2
ネコのニューロンの数は多く複雑なため解明できなかったが,アメフラシのニューロン数は少なく単純であり,ニューロンサイズも大きかったため。
まとめ
アメフラシは、決して「マニアックな生物」ではありません。
医学部生物が本当に求めている思考力を、最も端的に測れるテーマです。
- 慣れと鋭敏化を、行動レベルで説明できるか
- それを神経・シナプス・イオンのレベルまで落とし込めるか
- 医学につながる意義を理解しているか
これらを総合的に問えるからこそ、市原先生・橋本先生ともに、アメフラシを高順位に挙げています。
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